堀井 聰    

このページは画壇にて活躍されている白日会所属の画家さんを訪ね、日々どのようなこと
を思い、考えられているのかをリポートするものです。


●絵の具
第一回はウサギや犬そして金魚という身近な生き物をモチーフに、日本の伝統的装飾性
を取り入れ独自の世界観を展開されている堀井聰さんにスポットをあてました。

彼のアトリエを訪ねて京都の西の外れへと向かいました。
この先に本当に人が住んでいるのだろうか、と不安を覚えつつ雪の残る山道を抜けると、
ようやく素敵なアトリエ兼住まいを見つけることができました。

油彩・テンペラ・アクリルをはじめとする画材や技法、着物の端切れのコラージュなど
様々なものが彼の作品には取り入れられ、まさに技法・画材マスターと呼ぶに相応しく、
また自らを『絵の具フェチ』と称されるほどの絵の具好き。
   
お話も絵の具と絵との関係についてから始まりました。
「絵の具というものにはそれぞれ制約があるんですよ。その制約が変わる度に絵も変わっ
てくる。自分の意思ではなく、絵の具の言い分に耳を傾けていると自然に絵が変わってい
くんです。」 

堀井さんは高校時代より油絵を描かれ、京都市立芸術大学に進学後、古典技法を勉強す
るためにフレスコを専攻されます。技法史上、板絵やキャンバス画が登場するまでの主流
をなしていた、まだ乾いていない漆喰に水で溶いた顔料を用いて描く壁画であるフレスコ
は、長い間彼に影響を与え続けました。

「フレスコ画は技法面において極端に制約が多いジャンルなんですよね。それら制約を受け
る中で絵を学び始めたことは、後々の制作に強烈な影響を与え続けましたね。
その影響は良いものだったとは言い難いですけど。
フレスコ画は最初に完全な設計図を作り、途中変更は一切なしで仕事を進めていくんです。
そのため絵の構想が最初からカチッとしすぎる傾向がありましたし、
構想が頭のなかで完全にできあがらないと筆を握らないような癖がついちゃいました。」

その後テンペラと油彩の混合技法、そしてアクリル絵の具へと転向を繰り返されても、
フレスコで培われた制作姿勢は変わることがなく、
その影響から解放されたのは最近5年ぐらいのことだそうです。
一方で、フレスコに触れられたことは決してマイナス面だけではく、
絵の具好きへと導く契機でもあったようです。
 
「フレスコに取り組んで一番の収穫は何だったかというと、絵の具はチューブから搾り出
したものだけじゃなく、一から自分で作れることを知ったこと。
次第にそのことが身体に染み込んで、自分で作ることが自然になっていきました。
だからアクリル絵の具だろうと何であろうと平気で工夫していけるんですよ。
色々な方法で細工をしていくわけです。
ちょっとしたことでも絵の具の性質は大きく変わってきますから。」

現在はアクリル絵の具を中心に制作されていますが、その探究心は尽きることなく、制作
時の余った絵の具等を用いて実験をするのが日課だそうです。

                             
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